CLUB TRAIN 2019 ope体育_ope体育app|官网
2019年1月26日に、CLUB TRAIN 2019が開催された。
クラブトレインは、大垣市?本巣市を走るローカル線である樽見鉄道株式会社と、音楽体験の拡張を研究?実践する学内プロジェクトであるNxPC.Labが共同で主催するイベントだ。9回目となる今回は、スペシャルゲストとしてメディア?アート界の雄、真鍋大度さんをお迎えしての開催となった。当日は寒波が襲来し平野部でも雪が降る寒い日であったが、そんな寒さを感じさせないくらい大いに盛り上がった今回。このope体育_ope体育app|官网ではその模様をお伝えしたい。
クラブトレインは実際に走行する電車一両をまるごとクラブ空間へと変容させるユニークなイベントだ。大垣駅を出発し終点の樽見駅まで片道約70分ほど。途中休憩をはさみ往復で約3時間の旅程となる。
受付を済ませ乗車すると、車内奥の運転席付近にはライブパフォーマンス用の機材が押し込まれるかのように設営されているのが見える。ほかにも天井にはスクリーンとプロジェクタ、網棚や窓や壁にはLED、スピーカー、カメラ、謎のセンサー類などが所狭しとインストールされている。一般公募を通して参加した35名の乗客と関係スタッフ、そして前述の機材類がぎゅうぎゅうに詰め込まれた車内は、普段目にする「電車」とは明らかに様相を異にしており、これからはじまる体験がどのようになるのかと否応なく期待が高まる。
「本日は樽見鉄道 クラブトレインにご乗車いただき、誠にありがとうございます」
異様な車内の様相とは異なり、アナウンスの調子は普段どおりのまさしく電車のそれであるのが面白い。車掌さんの声を合図に、CLUB TRAINは出発し、そしてライブがスタートした。
前半、往路はエレクトロサウンドのライブパフォーマンスを皮切りに、バラエティに富む多彩なプレイが披露された。出発直後は多くの乗客が「電車内でライブパフォーマンスを見る」という体験にまだ戸惑いがあったことだろう。だが、座席に座って控えめに肩を揺らしている乗客をアジテートするように目前でプレイされるサックスの生演奏を通して、車内には次第に一体感がうまれてきた。DJがダンスミュージックをプレイし始めた頃、乗客はオーディエンスとなり、皆めいめいに立ち上がりつり革にぶら下がりながら音楽に陶酔しはじめていった。
終点 樽見駅に到着した頃、車内の空気はホカホカに温まっていた。雪が積もる樽見駅に停車するクラブトレインの車窓は汗を掻くように結露していて、その空気の盛り上がりが見て取れる。
今回、往路ではクラブトレインの後ろに一般の車両が連結されていた。終点での小休止の間に一般車両は切り離され一足先に大垣に向け出発。クラブトレインは往路の間点灯していた車内照明がとうとうOFFにされ、いよいよクラブの様相となって復路へ出発した。
出発と同時に今回のスペシャルゲスト、真鍋大度さんのパフォーマンスが始まった。エレクトロ?サウンドを軸足に、新旧を問わず、ジャンルを横断しながら展開されるDJプレイのクオリティはまさしく圧巻であり、車外の空気にさらされ少し冷えていたオーディエンス一同も一瞬で燃え上がる。細長い車内の中、ステージ付近は詰め寄る人でぎゅうぎゅうになるため、当然隣の人と肩をぶつけながら踊るのだが、この本来不可侵であるはずの公共空間をハックしているという共犯者めいた一体感のなかでは問題にならない。すし詰めのなかつり革や網棚につかまりながら踊るこの空気はまさしく熱狂といってよいものであっただろう。
樽見鉄道は途中信号待ち、ダイヤの調整、あるいは野生動物の線路への闖入など、さまざまな理由で一時停車することがある。熱狂の中電車が一時停車していると気づいたとき、ふと私自信が「早く発車してくれ 加速度がほしい!」という気持ちになったことに気がついた。「加速度」なんていう要素は通常のクラブでは求めるべくもない。だが、クラブにミラーボールが無いと寂しいように、クラブトレインは走っていないと寂しい。走行する車内で加速度を感じながら踊るのはふわふわとした心地がして楽しいのだ。この通常のクラブにはあるはずもない要素を求めてしまうようになったのは、このイベントを通して僕のクラブ体験に新しいチャンネルが付け加えられたからなのだろう。これはまさしく、NxPC.Labによってもたらされた「体験の拡張」にほかならない。しばらくして電車が再度動き出したとき、オーディエンスの中からどこからともなく「イエーイ!」という歓声が上がった。俺も同じ気持ちだ! 一体感!!
電車が市街地に差し掛かると、音量は下がり、車内照明が点灯した。あっという間の3時間であった。
「本日は樽見鉄道 クラブトレインにご乗車いただき、誠にありがとうございます。間もなく大垣、大垣です。お出口右側です。」
車掌さんのアナウンスはやはりいつもの聞き慣れた調子であったが、オーディエンスからは車掌さんに向かって万雷の拍手がおこった。車掌さんも、この特異な空間を共有した仲間なのだ。やがて電車は大垣に到着し、CLUB TRAIN 2019は幕となった。非日常の電車を降りるのは惜しく、後ろ髪を引かれるような気持ちになったのは私だけではないだろう。だが、濃厚なクラブトレイン体験を過ごした乗客たちの表情はみな一様に満足げであり、笑顔だったように思う。
本イベントは、樽見鉄道株式会社からは路線の認知向上、NxPC.Labからはの研究?実践の場という両者の狙いや利害がうまく合致したとても幸福な企画であるように思う。これはIAMASがあり、そして前代未聞の企画を受け入れてくれるローカル線がある大垣を除いてはそうそうあるものではない、貴重なものだろう。願わくば今後も様々な新しい試みを研究?実践し、新鮮でユニークなイベントであってほしいと思う。
CLUB TRAINはまた次回の開催も検討中とのことである。今後の動向も注目していきたい。