逆シミュレーション音楽は、コンピュータでシミュレーションされた音楽を、「逆」に人間が演算子を模倣して演奏していました。三輪はさらにその人間の身体を機械化することができないかと考えました。ここでは、「演算子を模倣する人間を模倣する機械」の試みを紹介します。
美術家の小笠原則彰氏との共作である《またりさま人形》は、2003年9月にアルスエレクトロニカとジーベックで発表されました。パフォーマンス作品《またりさま》を、水流で駆動する8匹の人形として制作しました。それぞれの人形が、1ビットのメモリを備えた8つのXOR演算子として動作することを目指しましたが、水と木という物理的な制約に阻まれ、完全な動作には至りませんでした。
ベルリン在住のイギリス人アーティストマーティン?リッチズと共同作品である《ThinkingMachine》は、2007年に東京大学駒場博物館の「MusicaexMachina」展で公開されました。この演奏する演算機械は《またりさま人形》とは違い、たったひとつの演算機構しか備えていませんが、メモリーの役割を果たす6つのボールの状態が次々と更新され、3つのチューブラーベルによって旋律を「出力」します。
このビデオは、2007年に制作された《Thinking Machine》をプリ?アルスエレクトニカに応募するために制作されたものです。 三輪眞弘自身が《Thinking Machine》が制作された経緯と、作品の仕組みについて解説しています。 《Thinking Machine》は2008年にプリ?アルスエレクトニカ、ハイブリッド?アート部門佳作を受賞しました。